Santoka Taneda 種田山頭火 平戸入りの下り 行乞記 三月三十一日


行乞記  三月三十一日  四月一日  四月二日  四月三日  四月四日



種田山頭火の平戸入りの下り、1932(昭和7)年3月31日の日記です。



行乞記 (二)
種田山頭火 

三月三十一日 晴、行程八里、平戸町、木村屋(三十・中)

早く出発する、歩々好風景だ、山に山、水に水である、短汀曲浦、炭車頻々だ。
江迎を行乞してゐて、ひよつこり双之介さんに再会して夢のやうに感じた、双之介さんはやつぱり不幸な人だつた。
双之介さん、つと立つて何か持つてきた、ウエストミンスターだ、一本いたゞいてブルの煙をくゆらす、乞食坊主と土耳其煙草とは調和しませんね。
日本百景九十九島、うつくしいといふ外ない。
田平から平戸へ、山も海も街もうつくしい、ちんまりとまとまつてソツがない、典型的日本風景の一つだらう。
テント伝道の太鼓が街を鳴らしてゆくのもふさはしい、お城の練垣が白く光つてゐる、――物みなうつくしいと感じた――すつかり好きになつてしまつた。
当地は爆弾三勇士の一人、作江伍長の出生地である、昨日本葬がはな/″\しく執行されたといふ。
今日の感想二三、――
私は今日まで、ほんたうに愛したことがない、随つてほんたうに憎んだこともない、いひかへれば、まだほんたうに生活したことがないのだ。
私は子供を好かない、子供に対しては何よりも『うるさい』と感じる、自分の子すら可愛がることの出来ない私が、他人の子を嫌つたところで無理はなからう。
此宿はしづかでよろしい、お客といつては私一人だ、一室一燈一鉢一人だ(宿に対してはお気の毒だけれど)。

・春寒い島から島へ渡される

昨夜は何だか変な女がやつてきてうろ/\してゐたやうだつた、をんなか、をんなか、をんなには用のない私だから、三杯機嫌でぐう/\寝てしまつたが!(一日朝記)


行乞記 (二) 種田山頭火 
1931(昭和6)年12月22日~1932(昭和7)年5月31日

青空文庫より
http://www.aozora.gr.jp/cards/000146/card45387.html





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