Santoka Taneda 種田山頭火 平戸入りの下り 行乞記 四月三日


行乞記  三月三十一日  四月一日  四月二日  四月三日  四月四日



種田山頭火の平戸入り四日目、1932(昭和7)年4月3日の日記です。



行乞記 (二)
種田山頭火 

四月三日 雨かと心配したが晴、しかし腹工合はよくない。

寝てばかりもゐられないので三時間ばかり町を行乞する、行乞相は満点に近かつた、それはしぼり腹のおかげだ、不健康の賜物だ、春秋の筆法でいへば、シヨウチユウ、サントウカヲタヾシウスだ。
湯に入つて、髯を剃つて、そして公園へ登つた(亀岡城阯)、サクラはまだ蕾だが人間は満開だ、そこでもこゝでも酒盛だ、三味が鳴つて盃が飛ぶ、お辨当のないのは私だけだ。
昨日も今日もノン アルコール デー、さびしいではありませんか、お察し申します。
春風シユウ/\といふ感じがした、歩いてをれば。

平戸よいとこ旅路ぢやけれど
   旅にあるよな気がしない

同宿二人、一人は例の印肉屋老人、一人は老遍路さん、此人酒はのまないけれど女好き(一円位で助平後家はありますまいかなどゝといふ、人事ではないが)。(know thyself!)
印肉屋老人は自称八十八才、赤い襦袢を着てゐる、酒のために助からない人間の一人だ、ありがたうございました(これはこれ蚯蚓の散歩なり)。
もう一人の老遍路さんは、□□者のカンシヤク持、どうしても雰囲気にはあはないといふ、まつたくさうだらうと思ふ、そのくせ彼はケチンボウのスケベイだ、しかし彼には好感が持てた、野宿常習遍路にして、飲むのは二円の茶!
印肉老人また出かけて酔うて来て踊つた、踊つた、夜の白むまで踊つた、だまつて、ひとりでおとなしく――あゝ、かなしい、さみしい。
また雨、ふるならふりやがれ!
晴れて寝、曇つて歩く、善哉々々。

酔ひどれも踊りつかれてぬくい雨
ふるさと遠い雨の音がする

けふの道はよかつた、汗ばんで歩いた、綿入二枚だもの、しかし、咲いてゐたのは、すみれ、たんぽゝ、げんげ、なのはな、白蓮、李、そしてさくら。……
これだけの労働、これだけの報酬。
酒代は惜しくないけれど酒は惜しい、物そのものを愛する、酒呑心理。
人間はあまりたつしやだと横着になる。
□□を、愛する夢を見た。
とう/\一睡もしなかつた、とろ/\するかと思へば夢、悪夢、斬られたり、突かれたり、だまされたり、すかされたり、七転八倒、さよなら!

――(これから改正)――

時として感じる、日本の風景は余り美しすぎる。
花ちらし――村総出のピクニツク――味取の総墓供養。



行乞記 (二) 種田山頭火 
1931(昭和6)年12月22日~1932(昭和7)年5月31日

青空文庫より
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